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岡山地方裁判所 昭和52年(行ウ)1号 判決 1978年8月02日

岡山市岩田町六番一一号

原告

吉原乳業有限会社

右代表者代表取締役

吉原三郎

右訴訟代理人弁護士

田渕浩介

藤本徹

同市天神町三番二三号

被告

岡山東税務署長 小川吉宏

右指定代理人

一志泰滋

菅近保徳

滝本嶺男

石井美登志

長安正司

松尾義彦

平野勉

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が原告に対し、昭和五〇年一〇月三一日付で、原告の昭和四九年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの事業年度の法人税についてした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

主文と同旨の判決

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は住宅の建売、土地売買等を営業目的とする法人であるが、昭和五〇年五月一三日被告に対し、原告の昭和四九年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの事業年度の法人税につき、青色申告書により申告期限内に、所得金額が五、五八七万九、七四〇円(うち課税土地譲渡利益金額六五三万六、〇〇〇円)であり、納付すべき税額は二、〇四八万五、五〇〇円(うち右利益金額に対する税額一三〇万七、二〇〇円)であると確定申告し、さらに同年一〇月二五日、所得金額が五、八三二万五、六二〇円(うち課税土地譲渡利益金額六五三万六、〇〇〇円)であり、納付すべき税額は二、一三二万六、二〇〇円(うち右利益金額に対する税額一三〇万七、二〇〇円)であると修正申告をした。

2  これに対し、被告は、原告の右所得金額中にはさらに二、八八一万円の課税土地譲渡利益金額があるとして、昭和五〇年一〇月三一日付で、原告の所得金額は五、八三二万五、六二〇円(うち課税土地譲渡利益金額三、五三四万六、〇〇〇円)であり、納付すべき税額は二、六八〇万五、一〇〇円(うち右利益金額に対する税額七〇六万九、二〇〇円)であると更正するとともに、過少申告加算税二七万三、九〇〇円の賦課決定をした。

3  しかし、被告の右更正処分及び賦課決定は、以下に述べる理由によって違法である。

(一) 被告の認定に係る前記課税土地譲渡利益金額二、八八一万円は、訴外大弘建設株式会社(以下「大弘建設」という)が、都市計画法二九条の規定に基づき、岡山県知事から開発行為の許可を受けていた倉敷市中島字陣之内一一一三番一ほか四筆の土地(以下「本件土地」という)を、同会社から原告が昭和四九年五月一六日に買受け、宅地に造成した上、その造成地を販売したことによるものであるが、たまたま原告の前記確定申告書及び修正申告書に、岡山県知事の開発許可に基づく地位承継の承認書が添付されていなかったため、被告は本件土地の譲渡益につき、租税特別措置法六三条三項(土地譲渡益重課の除外規定)を適用しなかったものである。

(二) しかしながら、本件土地は原告が前記大弘建設から開発許可に基づく地位の承継を受けて自ら開発行為をなしたもので、造成工事の検査及び公共施設に関する工事の検査等も事実上すべて原告が受けており、実質的には岡山県当局においても原告が大弘建設から地位の承継を受けて開発行為をしたことを認めていたものであって、原告は開発許可の地位承継につき県知事の承認を求める手続を失念していたというだけであるから、原告は租税特別措置法六三条三項四号にいう開発許可に基づく地位を承継した法人に該当し、同条項の適用を受けるべきものである。

(三) なお、昭和五一年三月四日付直法二-六国税庁長官通達は、昭和五一年四月一日以後終了する事業年度の土地の譲渡等についての取扱いを定めたものであるが、右通達六三-(五)-四は、租税特別措置法六三条三項四号における、当該法人が造成した宅地という要件は、措置法規則に掲げる都道府県知事の開発許可書等の証明書類によってのみ判定するとの趣旨を示しており、このことからみて、右通達が発せられる以前は、証明書類の名義にかかわらず実質的に判定されていたことが知られる。本件においても、原告の地位承継の点は、県知事の承認書の有無にかかわらず、実質的に判断されるべきである。

二  請求原因に対する被告の答弁

1  請求原因1、2及び3(一)の各事実は認める。

2  同3(二)の事実について、原告が自ら開発行為をなしたこと、原告が県知事の開発許可の地位承継承認を得ていないことは認め、その余の真実は否認し、その主張は争う。

3  同3(三)につき、原告主張のような通達の存在は認めるが、その解釈についての主張は争う。

三  被告の主張

1  原告は租税特別措置法六三条三項四号の適用を受けるための実体的要件を欠くものである。すなわち、同号の「開発許可に基づく地位の承継」があったというためには、都市計画法四五条に定めるとおり、(一)開発許可を受けた者から当該開発行為に関する工事を施行する権限を取得した者が、(二)右承継について都道府県知事の承認を受けることの二つの要件を満たすことが必要であるが、原告は右(二)の要件を欠いている。

2  また、租税特別措置法六三条三項四号適用の手続的要件として、同法施行規則二二条二項四号イは、開発許可に基づく地位を承継した法人で都市計画法四五条の県知事等の承認を要するものにあっては、当該承認を受けた旨を証する書類を法人税申告書に添付することを求めているが、原告はこれを添付しなかったものである。

3  原告の引用する通達は、租税特別措置法六三条三項四号の実体的要件のうちの「開発許可を受けた法人が自ら造成したこと」はいかなる書類によって証明さるべきかを定めたものであって、本件における前記1、2の各要件と直接の関係はない。

第三証拠

一  原告

1  甲第一ないし第一四号証を提出。

2  乙号各証の成立を認める。(乙第四ないし第七号証については原本の存在も認める。)

二  被告

1  乙第一号証、第二号証の一、二、第三ないし第七号証を提出。

2  甲号各証の成立を認める。

理由

一  請求原因1、2及び3(一)の各事実、原告が自ら本件土地の開発行為をなしたが、県知事の開発許可の地位承継承認を得ていないことは当事者間に争いがない。

二  そこで、原告が租税特別措置法六三条三項四号にいう開発許可に基づく地位を承継した法人に該当するかどうかについて判断する。

都市計画法二九条の開発行為の許可は、許可申請者の資力、信用等の要素をも考慮した上で特定の者に対し与えられるものであって、右許可を受けた地位は一身専属的な性格のものと解せられる。したがって、開発許可を受けた者から土地所有権その他工事施行の権限を取得した者も、本来はあらためて知事の許可を受けるべきところ、事務の簡素化のため、許可に代えて知事の承認をもって足りるとしたのが、同法四五の趣旨と理解される。同条の右のような趣旨及びその文言に照らすと、開発許可を受けた地位の承継については、都道府県知事の承認がその効力発生の要件であると解するのが相当である。そして、租税特別措置法六三条三項四号にいう開発許可に基づく地位の承継の意義も、これと別異に解すべき特段の理由はないから、同号の適用についても、知事の承認を受けることが実体的要件をなすと言うべきであるが、原告がこの要件を満たしていないことは、原告の自認するところである。

よって、原告は、同法条三項四号にいう開発許可に基づく地位を承継した法人に該当せず、同項の適用を受け得ないものと言うほかない。

なお、仮に原告主張のように、原告の大弘建設からの土地譲受及び開発工事施工の事実を県当局が知っていたとしても、そのことだけで、原告を開発許可に基づく地位を承継した法人と同視すべきものでないことは、上述した点のほか、租税負担軽減の特例規定は、その性質上安易な拡張類推解釈を許すべきでないことからも明らかである。

また、原告指摘の通達は、租税特別措置法六三条三項四号にいう、開発許可を受けた法人が自ら造成した宅地であると認定するための基準を示したものであって、本件のような地位の承継の問題に直接にかかわるものではないと解される。

三  以上の次第で、本件更正処分には原告主張の瑕疵はなく、過少申告加算税の賦課にも何らの瑕疵を認め得ないから、原告の本訴請求は理由がないものとしてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田川雄三 裁判官 浅田登美子 裁判官 坂本倫城)

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